COLUMN

2023/07/23 14:22

IKOU Bib(スタイ)がどのようにして生まれたのか、開発ストーリーをお届けします。1枚のスタイに詰まったたくさんの想いを、皆さまに知っていただくことができたら嬉しいです。第1回目の今回は、IKOU Bib や私たちについて、改めてご紹介します。

インクルーシブデザインから生まれた、理想のスタイ


発売以来、たくさんの皆さまにご愛用いただいているIKOU Bib。(スタイは、よだれかけ、ビブと呼ばれることもあります。)高い吸水速乾性と、シンプルで洋服に合わせやすいデザインが支持され、リピートして購入してくださるユーザーさんの多い商品です。

IKOU Bib の商品ページはこちら

IKOU Bibの開発は、よだれをたくさん吸う機能性とデザイン性を両立したスタイが見つからないという、障害を持つ子どもを育てる私たち自身の悩みを解決するためにはじまりました。
その結果、障害児だけでなく、乳幼児、高齢者など、たくさんの人たちにも価値を感じてもらえる、まさにIKOUの目指すインクルーシブデザインのアプローチを体現するプロダクトが生まれたと感じています。

私たちIKOUのチームは、商品を発売することはゴールではなく、一つの通過点であると考え、常によりよい商品を追究していきたいと考えています。

わたしたちについて


IKOU(イコウ)は、障害の有無に関わらず、使う人に価値を感じてもらえるものづくりを目指す、ベビー・キッズ向けのインクルーシブ・ブランドです。2022年4月にポータブルチェアとスタイを発売して産声を上げ、その後キッズウェアもラインアップに追加しました。
IKOUの商品ラインアップはこちら

IKOU Bib の開発を担当したのは、キッズウェアのディレクターである河井麻未。その開発を提案したのは、理想のスタイが見つからずに困っていた、代表の松本友理でした。次回から、2人の対談形式での開発ストーリーをお伝えするにあたり、2人について簡単にご紹介させてください。

●松本友理
株式会社Halu 代表取締役。
2007年に大学卒業後、トヨタ自動車株式会社に入社。本社にてプロダクトマネージャーとして、カローラなどのグローバル戦略車の商品企画や、コーポレート価格戦略を担当。ものづくりには、人びとの暮らしをよりよく変える力があることを実感する。
2016年、長男を出産。脳性まひによる運動機能障害があることが判明し、息子のケアとリハビリに専念する中で、「障がい者は保護されるべき存在である」という前提の元に成り立つ社会福祉制度や、障がい児とその家族を取り巻く環境に課題を感じ、起業を決意。トヨタ自動車を退職し、2020年に株式会社Haluを創業。
障がいの有無で使い手を選ばないプロダクト作りを通して、多様なニーズを持つ人たちが共創できる、インクルーシブな社会の実現を目指す。

●河井麻未

株式会社Halu キッズウェア ディレクター。
2008年に服飾専門学校卒業後、株式会社ワールドに入社。レディスキャリアブランドのUNTITLEDパタンナーとしてキャリアを積む。
2016年、長男を出産。超低出生体重児として生まれ、その後、脳性まひと判明したことから、ケアやリハビリに専念するため退職。息子との日常生活を通して、障がい児やその家族の暮らしを豊かにするために、必要でも世の中にないプロダクトが多くあることを実感し、自身で手作りを始める。
身体的に障がいのある子どもたちやその家族にも「洋服を選ぶ楽しさ」を感じてほしいという思いを抱いていた中で、IKOUポータブルチェアのユーザーテストを通して松本と出会い、意気投合。2020年に1人目のメンバーとしてIKOU立ち上げに参画。


IKOUの考えるインクルーシブデザインとは?

インクルーシブデザインとは、高齢者、障害者、外国人など、従来のデザインプロセスでは見過ごされがちだった人たちに、企画の最初の段階から参画してもらい、ともにデザインを創っていくアプローチです。いわゆるマイノリティと呼ばれる人たちへのインタビューや観察を通して、ニーズを深く理解することで、これまで気づかなかった課題に気づくことができ、既成概念にとらわれないイノベーティブなアイディアを生み出すきっかけにつながります。

皆さんからよく頂く質問が、インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違いについてです。

どちらも、デザインの力で誰かを「エクスクルージョン(排除)」するのではなく、多様な人を「インクルージョン(包摂)」することを目指すものであることは共通していますが、そのためのアプローチが異なります。

インクルーシブデザインは「マイノリティと共に創る」というプロセスを重視するため、結果として生まれるプロダクトやサービスがマイノリティ向けであるか、もっと多くの人たちに向けたものになるかといったゴール設定や、そこに至るまでのアプローチを、ケースに応じて柔軟に設定することができます。

一方で、ユニバーサルデザインは、「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインする」ことをゴールとし、その実現のために「ユニバーサルデザイン7原則」が存在するなど、より体系化されたアプローチとなっています。

最初から「できるだけ多くの人にとって使いやすいもの」をデザインしようとするユニバーサルデザインに対して、インクルーシブデザインは「まずは特定の誰かの課題にフォーカスし、そこから可能性を広げていく」という、より柔軟性をもったアプローチであると私たちは捉えています。

IKOUのものづくりにおいては、インクルーシブデザインのアプローチによって、プロジェクトにユーザーの皆さんを巻き込みながら、「身体的な障害を抱える子どもたちとその家族の体験から学び、一般のファミリーも価値を感じられるデザインに還元する」ことを目指しています。

障害児育児の体験から学んだことや、そこから生まれるアイデアは、当事者に限らず広く一般の子どもたちとその家族にとっても価値となるはず。そして、それを伝えていくことで、両者の境界を溶かしていくことができると信じているからです。

これからお伝えするIKOU Bib の開発ストーリーを通して、IKOUのインクルーシブデザインのアプローチについて、より具体的に皆さんにお伝えしていければと思っています。


次回からは、現在のIKOU Bib がどのようにして生まれたのか、発売までの開発ストーリーを2人の対談形式でお届けします。こだわりがたくさん詰まっているので、複数回にわたる連載になりますが、ぜひお付き合いください。

メールマガジンを受け取る

新商品やキャンペーンなどの最新情報をお届けいたします。