2023/07/23 14:34
IKOU Bib(スタイ)がどのようにして生まれたのか、開発ストーリーをお届けします。
1枚のスタイに詰まったたくさんの想いを、皆さまに知っていただくことができたら嬉しいです。素材やデザインの試行錯誤の末にようやく完成したIKOU Bib は、障害を持つお子さんのスタイ選びに関して悩みを持っていたご家族の皆さんからの共感を呼び、ありがたいことに発売後すぐに多くの方にご購入いただきました。
開発者の河井と松本は、インクルーシブデザインにおいて最も大切な「ユーザーとともにデザインする」原則を貫くため、ご購入いただいたユーザーの皆さまにご使用いただいた感想をオンラインインタビューで繰り返しヒアリングしました。するとそこで、新たな課題が浮かび上がったのでした。
今回はIKOUスタイのサイズバリエーション追加について、河井と松本の対談形式でお伝えします。
一番多かった感想は「大きいサイズが欲しい」
松本:特に小学生以上のお子さんをお持ちのご家族からは、よだれをキャッチする布の面積をもっと大きくしてほしいというリクエストを本当に多く頂きました。
河井:市販の乳児用のスタイが小さくなってしまい、使えるスタイがなくて困っていた方達は、ハンドタオルにゴムを通した手作りのスタイを使っているケースも多くありました。その場合はタオルの面積がかなり大きくなるので、比較するとIKOU Bib は小さく感じたようでした。
「大きいサイズが欲しい」というニーズは分かったものの、果たしてどれくらい大きくしたらよいのかを探ることが、難しい課題でしたね。
そこで、いくつか大きいサイズの試作品を作り、大きいサイズが欲しいとリクエストをくださったユーザーさん達にモニターをしていただきました。
松本:IKOUとしては、機能性とデザイン性を両立するため、大きなサイズでもスタイが全面に主張するのではなく、普段着に馴染むようにしたいという思いがあったので、それを実現しながらサイズを大きくすることは難しい挑戦でしたね。
河井:そうなんです。デザインとのバランスがすごく難しくて。単純に三角を大きくしていくと首周りもゆるくなってそこからよだれが服に染みてしまうので、首回りの大きさはレギュラーサイズをベースに調整しつつ、布の面積を大きくして、かつ自然な感じに落とし込むところがすごく難しかったです。
アジャスタータイプかスナップボタンか
松本:首回りのサイズ感については、普段からよだれが多いので首に沿うように着けたい人と、必要な時によだれを拭ければいいのでゆるっと付けたい人の両方に対応できるように、テープにボタンを二つ付けて長さを調整できるようにしていました。
一方で、スタイ全体が大きくなると首周りの長さも長くなるので、調整できるボタンが二つではさまざまなニーズに応えられないのではと感じ、自分の好きな場所で長さを決められるアジャスタータイプがよいのではというアイディアが生まれました。
アジャスタータイプの試作品
松本:アジャスタータイプと、ボタンを3つにしたタイプ、2種類のスタイを大きいサイズが欲しいとリクエストしてくれたユーザーさん何人かに送って試していただいたんです。
そこでは、アジャスタータイプはスナップボタンと違って留め具が一般的ではないので、幼稚園や保育園、療育園など様々な場所でスタイを替えてもらう場合に、先生達に使い方が分からない可能性があると言う声も挙がりました。
河井:アジャスタータイプは、首回りの長さを好きなところで決められるメリットがありましたが、実際に試作品を作ってみると、課題も見つかりました。
仮に何かにスタイが引っ掛かってしまった時、スナップボタンであれば力が掛かれば外れますが、アジャスタータイプだと外れず首が締まってしまう危険があることが分かったんです。そこで、ラージサイズはスタップボタンを3つにして、首回りの長さを3段階で調節できるようにしました。
松本:それぞれの人が好きに調節して使えるというアジャスタータイプのアイディアはインクルーシブなプロダクトを実現する上でとてもよいと思ったのですが、ユーザーさんに使ってもらったところ、アジャスタータイプよりスナップボタンタイプの方がいいという声が圧倒的に多かったです。
実際のユーザーの皆さまから日々の生活において本当に欲しいものを教えてもらうことで、作り手の思い込みでデザインを進めてしまうリスクを減らすことができることは、インクルーシブデザインのアプローチの大きな強みだなと感じています。
仮に何かにスタイが引っ掛かってしまった時、スナップボタンであれば力が掛かれば外れますが、アジャスタータイプだと外れず首が締まってしまう危険があることが分かったんです。そこで、ラージサイズはスタップボタンを3つにして、首回りの長さを3段階で調節できるようにしました。
松本:それぞれの人が好きに調節して使えるというアジャスタータイプのアイディアはインクルーシブなプロダクトを実現する上でとてもよいと思ったのですが、ユーザーさんに使ってもらったところ、アジャスタータイプよりスナップボタンタイプの方がいいという声が圧倒的に多かったです。
実際のユーザーの皆さまから日々の生活において本当に欲しいものを教えてもらうことで、作り手の思い込みでデザインを進めてしまうリスクを減らすことができることは、インクルーシブデザインのアプローチの大きな強みだなと感じています。
2つのサイズバリエーションの誕生
河井:こうして、レギュラーとラージというサイズバリエーションが生まれました。ラージサイズは布の長さがレギュラーよりも三角形の頂点の部分で3センチ長くなっています。
小学生以上の障害のあるお子さんのご両親は、使えるスタイがなくて困ってる方がとても多いので、そういった方々がラージサイズをまとめて購入して下さいましたね。
松本:そうですね。あとリピーターさんがすごく多いのも、IKOU Bib の特徴です。購入して繰り返し使う中で気に入っていただけて、リピートして購入してくださるというのは、作り手としてとても嬉しいですね。
私もヘビーユーザーの一人なので、使いたいと思えるスタイがなくて困っている皆さんの生活が少し楽になったり、気持ちが豊かになったりするお手伝いができているのかなって自負しています。
河井:サイズバリエーション追加の過程では、IKOUが考えるインクルーシブデザインのアプローチについて改めて考える機会になりました。
困りごとを抱える方たちの声を聞きながら一緒にプロダクトをデザインすることは始まりにすぎなくて、プロダクトが完成してもそこで終わりではなく、常にユーザーの皆さんの声を聞き続けながら商品をアップデートしていくことが、IKOUのものづくりの特徴であり強みですね。
松本:スタイの開発を通して、1つのサイズで全ての人のニーズに対応できなくても、レギュラーとラージという二つの選択肢を作ることで、より多くの人たちの課題を解決できることに気づいたのも、大きな成果でした。
インクルーシブデザインはそれぞれの人達の困りごとを起点とするアプローチなので、それぞれの人達が「使える」ではなく「使いたい」と思ってくれるものを提供することが目指すべきゴールだと考えています。でも、それぞれ異なるニーズを一つのプロダクトで満たすのは、すごく難易度が高い。そこで、それぞれの人たちに合った選択肢を「バリエーション」という形で展開することは、インクルーシブデザインによるものづくりの一つのソリューションになります。
この気づきは、スタイ以外にも、キッズウェアのレギンスにおいてスリムとレギュラーという2つのバリエーションを作るなど、IKOUの他のプロダクトの開発にも活かされています。実際に自分たちでプロダクトを作る過程での試行錯誤があるからこそ、インクルーシブデザインのアプローチについての理解が深まりました。
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IKOU Bib の誕生からサイズ追加までのストーリーをお読みいただきありがとうございます。次回は2023年9月に新たに生まれ変わった新たなIKOU Bib について、なぜアップデートを行ったのか、どんなところが改良されたのかについてご紹介します。